美容師がAIでホームケアの説明文を作る手順は、施術のあとにお客様へ渡す文章の下書きを生成AIに任せる作業です。ただし、任せてよいのは「言葉の整理と文章の形づくり」までです。お客様の個人情報の扱いと、商品の効果の言い切りは、AIの出力に任せてはいけません。この記事では、シャンプー・ドライヤー・カラー後の過ごし方・商品の使い方という4つの場面を例に、AIで説明文を作る手順と、効果をうたわない表現の確認を順に整理します。
結論を先に書くと、流れは次のとおりです。まず、書く場面と読む人を決めます。次に、AIに渡す材料を「手順」と「メーカーの表示どおりの商品情報」に絞ります。AIが出した下書きは、化粧品の効能の範囲と広告の基準に照らして美容師が1文ずつ確認し、直したうえで使います。厚生労働省の通知や基準は2026年10月12日に開いて文言を確かめたものだけを引用し、確認できていない効能の言い回しは書きません。
この記事の「仮の例」は、手順を見せるために作った架空の文面です。実在のお客様やサロン、特定のメーカーの商品とは関係がありません。AIの使い方そのものから始めたい方は、先に美容師のAI活用の始め方とルールの決め方をまとめた記事を読むと、この記事の前提がつかめます。
先に結論|AIに任せるのは文章の下書きまで、効果の判断は美容師が持つ
ホームケアの説明文とは、施術後にお客様が自宅で行うシャンプーやドライヤーなどの手入れの手順を、口頭やカード、LINE、SNSで伝えるために文章にしたものです。
AIは、箇条書きのメモを読みやすい文章に整えたり、同じ内容を口頭用・カード用・LINE用に書き分けたりするのが得意です。一方で、その商品が髪や頭皮にどう働くかを正しく説明できるかどうかは別の問題です。生成AIは、もっともらしい文章を作ることはできても、その内容が正しいことまでは約束してくれません。
そこで役割を分けます。AIには「手順の並べ替え」「言い回しの候補出し」「読みやすさの調整」を任せます。美容師が持つのは、次の3つです。1つ目は、その手順がお客様の髪や頭皮の状態に合っているかの判断です。2つ目は、商品について書いてよい範囲、つまりメーカーの表示と化粧品の効能の範囲に収まっているかの確認です。3つ目は、お客様の個人情報をAIに渡さないという線引きです。
この分け方にしておくと、AIを使うことで増える手間は「確認の1段」だけになります。確認の1段をどう回すかが、この記事の中心です。
ホームケアの説明文でAIが役立つ場面と、任せない場面
AIが役立つのは「すでに決まっている手順や事実」を整える作業で、任せないのは「効果の有無や髪・頭皮の状態の判断」です。
ホームケアの説明は、毎回ゼロから考える内容ではありません。シャンプーの流れ、ドライヤーの当て方、カラー後に気をつけたいこと、店販商品の使い方など、サロンの中でおおむね決まっている手順があるはずです。その手順を言葉にする部分でAIは手助けになります。下の表は、場面ごとに「AIに任せやすい作業」と「美容師が決めること」を並べたものです。
| 場面 | AIに任せやすい作業 | 美容師が決めること |
|---|---|---|
| シャンプー | 洗う順番を、読みやすい手順の文章にする | お客様の頭皮の状態に合う洗い方か、商品の使用量はメーカーの表示どおりか |
| ドライヤー | 根元から毛先へ乾かす流れを短い文にまとめる | 温度や距離の目安をどう伝えるか、傷みやすい部分への注意の言い方 |
| カラー後の過ごし方 | 気をつけたい点を、箇条書きから丁寧な文章に直す | その施術内容で実際に注意すべきこと、不安があるときの連絡先 |
| 商品の使い方 | メーカーの使い方の表示を、お客様向けの言葉に言い換える | 書いてよい効能の範囲、使用上の注意の書き漏れがないか |
| 体調や肌の不調が出たとき | 連絡の流れを、迷わない文面にする | 使用を中止する目安と、医師への相談を勧める言い方 |
表の右の列は、どれもAIが判断できない内容です。お客様の髪や頭皮を見ているのは美容師だけで、AIには画面の向こうの様子が見えません。左から右へ「文章の形」から「中身の責任」に移っていく、と考えると整理しやすくなります。
作る前に決める|説明文の相手・場面・商品の事実
下書きを頼む前に「誰が・どの場面で・何を読むか」と「商品について確かな事実はどこにあるか」を決めておくと、AIの出力のぶれと確認の手間が減ります。
AIに「ホームケアの説明文を書いて」とだけ頼むと、一般論のような文章が返ってきます。サロンの手順に合わない言い方や、商品について根拠の分からない説明が混じることも少なくありません。頼む前に、次の3点をメモにしておきます。
- 相手と場面:初めて来店したお客様か常連か、渡す場面は会計の前後か、帰宅後のLINEか、カードか。
- 書く範囲:シャンプー、ドライヤー、カラー後、商品の使い方のうち、今回作る場面はどれか。
- 事実の置き場所:商品について書いてよい事実は、メーカーの表示(容器の記載・取扱説明・メーカー公式の商品ページ)にあるものだけ、と決める。
3つ目が特に大切です。商品の説明で迷ったとき、AIに「この成分は髪にどう働きますか」と聞いて出てきた答えを、そのまま説明文に載せてはいけません。AIの答えは、メーカーの表示とは別のものです。説明文に使う商品情報は、メーカーの表示を人の目で写し取ったものに限ります。
サロンの文面ルールも、短くメモしておくと便利です。敬語の程度、「お客様」と書くか「あなた」と書くか、絵文字を使うか、LINEでは何行までにするか、といった好みです。これはAIに渡してよい情報なので、毎回貼り付ければ文章のトーンがそろいます。
AIに渡してよい情報と、渡さない情報
AIに渡してよいのは、サロンの手順・メーカーの表示どおりの商品情報・文面のルールで、渡さないのは、お客様個人が特定できる情報と、肌や髪の状態など個別の情報です。
個人情報保護委員会は、2023年6月2日付の生成AIサービスの利用に関する注意喚起等で、個人情報取扱事業者が生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、特定された利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認するよう求めています。さらに、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合は、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性があるとしています。そのため、そのような入力をするときは、サービスの提供事業者が個人データを機械学習に利用しないことなどを十分に確認するよう示されています。
同じ文書は、一般の利用者向けにも、入力された個人情報が生成AIの機械学習に利用されることがあることや、応答結果に不正確な内容が含まれることがあることを挙げ、事業者の利用規約やプライバシーポリシーを確認して判断するよう求めています。サロンでAIを使う場合も、まず契約しているサービスの規約でデータの扱いを確かめるのが先です。案内ページは個人情報保護委員会の同名のページにあります。
ホームケアの説明文を作るだけなら、お客様の個人情報は要りません。要らないものは最初から渡さない、と決めるのがいちばん安全です。次の表を、サロンの取り決めのたたき台にしてください。
| 区分 | 具体例 | AIへの渡し方 |
|---|---|---|
| 渡してよい | サロンのホームケア手順のメモ、シャンプーやドライヤーの一般的な流れ | そのまま貼り付けてよい |
| 渡してよい | メーカーの表示を写した商品名・使い方・使用上の注意 | 表示の文言を写して貼り、出典のメモも添える |
| 渡してよい | サロンの文面ルール(敬語の程度、文字数、LINE向けか口頭向けか) | 毎回同じルールを貼る |
| 渡さない | お客様の氏名・連絡先・LINEのアカウント名・予約履歴 | 入力しない。宛名は出力後に美容師が手で入れる |
| 渡さない | お客様個人の肌や頭皮の悩み、アレルギー、過去のトラブルの記録 | 入力しない。個別の注意は美容師が書き足す |
| 渡さない | お客様の顔や髪が写った写真 | 入力しない |
お客様の肌やアレルギーに関する情報は、カウンセリングで聞き取るものの中でも扱いに注意が要る部類です。聞き取り項目の分け方と保存の考え方は、AIでカウンセリングシートを作る手順の記事で個人情報の観点から整理しています。ホームケアの説明文では、その情報をAIに持ち込まない、という一線を守れば足ります。
説明文を作る5つの段階
説明文づくりは「場面を決める」「材料をそろえる」「AIに頼む」「効能の表現を確認する」「美容師が仕上げる」の5つの段階で進めます。
流れを固定しておくと、誰が作っても同じ品質になります。5つの段階は次のとおりです。
- 場面を決める:シャンプー、ドライヤー、カラー後、商品の使い方のうち、今回作る場面をひとつ選びます。ひとつの文章に全部を詰め込むと、読む側が迷います。
- 材料をそろえる:サロンの手順メモと、メーカーの表示を写した商品情報を用意します。前の見出しの表で「渡してよい」とした情報だけを使います。
- AIに頼む:次の見出しで紹介する指示文の型に材料を入れて、下書きを2案ほど出してもらいます。
- 効能の表現を確認する:下書きを、化粧品の効能の範囲と広告の基準に照らして見直します。AIが足した「効果を思わせる言葉」を探して外すのが中心です。
- 美容師が仕上げる:お客様の状態に合わせた一言を書き足し、宛名を入れ、サロンの言葉遣いにそろえます。
4つ目の確認と5つ目の仕上げは、AIには任せません。1〜3はAIと一緒に進めても、4と5は美容師の仕事として残しておくと、責任の所在が曖昧になりません。
AIに渡す指示文の作り方
指示文には「役割・場面・材料・書き方のルール・やってはいけないこと」の5つを入れると、下書きのぶれが小さくなります。
指示文は、長く書く必要はありません。入れる項目が決まっていれば、毎回同じ型を使い回せます。次は、シャンプーの説明を頼むときの型の例です。サロンのメモとメーカーの表示は、ここに貼り付けます。
美容室が、施術後のお客様に渡すシャンプーの説明文の下書きを作ります。読む人は、自宅で初めてこの商品を使うお客様です。
材料は、次のサロンの手順メモと、メーカーの表示を写した使い方です(ここに貼り付けます)。材料に書かれていない内容は足さないでください。
書き方は、敬語で、短い文を使い、手順を番号付きにします。全体の長さはLINEで読みやすい程度にしてください。
書かないことは、髪や頭皮が変わる・良くなるといった効果の説明、商品の成分の働きの説明、他の商品との比較です。材料にない内容を書く必要があるときは、書かずに「材料にありません」と知らせてください。
最後の一文が実は大切です。「材料にない内容は書かず、足りない旨を知らせる」と指示しておくと、AIが自信のあるふりをして説明を補うことを防げます。それでも補ってくることはあるので、出力は毎回材料と突き合わせます。
下書きは、1案だけでなく2案ほど出してもらいます。比べると、言い回しの違いから、AIが材料にない内容を足した箇所に気づきやすくなります。仕上げの前に、材料に載っていない文を探す作業を挟むのが確認の第一歩です。
効能表現の線引き|化粧品の効能の範囲を一次情報で確認する
化粧品として広告できる効能は、厚生労働省の通知「化粧品の効能の範囲の改正について」に定められた範囲に限られ、範囲外の効能や薬理作用に基づく効能は表現できません。
まず用語を整理します。薬機法は、正式には「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称で、化粧品や医薬部外品の広告についてのルールも含みます。店販のシャンプーやトリートメントには、化粧品として扱われる商品と、「医薬部外品」と表示された商品があります。医薬部外品は、承認を受けた効能効果の範囲で表現するという別のルールが適用されます。どちらにあたるかは、容器の表示で確かめてください。この記事で扱う効能の範囲は、化粧品についてのものです。
化粧品の効能の範囲を定めた厚生労働省の通知(平成23年7月21日付、薬食発0721第1号)の別表第1には、頭皮や毛髪に関するものとして、たとえば「頭皮、毛髪を清浄にする。」「毛髪をしなやかにする。」「毛髪のつやを保つ。」「クシどおりをよくする。」「毛髪の水分、油分を補い保つ。」といった文言が並んでいます。56の項目のうち、ここに載っているのがごく一部であることに注意してください。説明文に効能を書くなら、その商品について書いてよい効能かどうかを、この別表と商品の表示で確かめます。
AIに言い換えさせると、別表の範囲を超える言い方に変わってしまうおそれがあります。たとえば「毛髪をしなやかにする」を「髪質を根本から変える」と言い換えれば、範囲を超えます。効能を書く箇所は、AIに任せず、別表の文言から選ぶほうが安全です。
基準の側では、医薬品等適正広告基準の改正について(平成29年9月29日付、薬生発0929第4号)が、目的を「広告が虚偽、誇大にわたらないようにするとともにその適正を図ること」としています。対象は、新聞や雑誌のほか、ウェブサイトやソーシャル・ネットワーキング・サービス等のすべての媒体における広告です。承認を要しない化粧品の効能効果の表現は、先ほどの平成23年の通知の範囲をこえてはならない、と書かれています。
同じ基準は、効能効果等や安全性を具体的に挙げて請け合うような表現をしてはならないこと、「最大級の表現又はこれに類する表現」をしてはならないことも定めています。さらに、解説にあたる医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について(薬生監麻発0929第5号)は、化粧品は、本来そのほとんどが薬理作用によって効能効果が認められたものではないため、別表に記載する効能効果以外の薬理作用による効能効果の表現はできない、と説明しています。
一方で、同じ解説は、別表以外にも「化粧くずれを防ぐ」「小じわを目立たなく見せる」「みずみずしい肌に見せる」等のメーキャップ効果や、「清涼感を与える」「爽快にする」等の使用感は、事実に反しない限り表示できる、としています。何でも書けないわけではなく、書ける範囲は決まっている、という整理です。なお、これらの通知・基準は、筆者が2026年10月12日に開いたときの厚生労働省のページに載っていた版です。改正がないか、使う前に厚生労働省のページで最新の版を確かめてください。
効果を感じさせる言葉を、事実と手順に置き換える
効果をうたわない説明文にするには、結果を約束する言葉を「何をするか」という手順や、メーカーの表示にある事実の言葉に置き換えます。
効果をうたわないというのは、役に立たない文章にするということではありません。お客様が知りたいのは、「この後どう扱えばよいか」です。結果の約束を手順の説明に置き換えれば、情報量はむしろ増えます。次の表は、AIの下書きによく出てくる書き方の型と、置き換えの方向をまとめたものです。根拠の列は、前の見出しで紹介した厚生労働省の医薬品等適正広告基準とその解説に対応しています。
| 見直したい書き方の型 | 見直す理由と根拠 | 置き換えの方向 |
|---|---|---|
| 髪質が変わる、傷みが治る、といった変化の説明 | 別表にない効能や薬理作用による効能は表現できない(適正広告基準の解説) | 「この商品はこの順番で使います」という手順の説明 |
| 「間違いなく」「これで十分です」のような言い切り | 効能効果等や安全性を具体的に挙げて確実だと保証するような表現は認められない(適正広告基準 第4の3) | 「目安として」「状態を見ながら」と、判断の主体を人に戻す書き方 |
| 「いちばん」「最強」のような最大級の表現 | 最大級の表現又はこれに類する表現は認められない(同上) | 商品の特徴を、メーカーの表示にある事実の言葉で書く |
| 他の商品や他店の方法を下げる書き方 | 他社の製品を誹謗する広告は認められない(適正広告基準 第4の9) | 比べず、自分のサロンの手順だけを書く |
| 使用前後の写真に、効果の出る速さや続く期間を言い切る説明を添える | 効果発現までの時間や持続時間の保証となる写真等は認められない(適正広告基準の解説) | 写真は手順の説明用にとどめ、結果の説明は添えない |
| 「私も使っています」のような体験談的な言い方 | 使用経験や体験談的広告は、化粧品の使用感を説明する場合を除き行ってはならない(適正広告基準の解説) | 体験談の代わりに、使い方の手順と使用上の注意を書く |
表の根拠は、いずれも医薬品等適正広告基準とその解説に書かれている内容です。ただし、解説は冒頭で、ある広告が基準に反するかどうかは、事例の文面だけから形式的に判断せず、利用される媒体の性質や広告表現全体の構成、説明の文脈なども含めて総合的に考える必要がある、と述べています。表は判断の入口であって、ひとつの言葉の可否を決める一覧ではない点に注意してください。
もうひとつ、基準は「使用及び取扱い上の注意を特に換起する必要のある医薬品等について広告する場合は、それらの事項を、又は使用及び取扱い上の注意に留意すべき旨を、付記し又は付言しなければならない」としています。ホームケアの説明文でも、商品の使い方を書くなら、使用上の注意はメーカーの表示を写して添えておくと安心です。
美容師の推せんと、店頭での使い方の実演の扱い
適正広告基準は、美容師が推せんしているといった広告を禁じる一方、解説は、美容師が店頭販売で化粧品の使い方を実演することを禁止する趣旨ではないと述べています。
美容師にとって、見落としやすいのがこの点です。適正広告基準の第4の10は、医薬関係者のほか「理容師、美容師」などが、医薬品等の効能効果等に関し、指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告をしてはならない、と定めています。解説では、この項目の趣旨を、推せん広告は一般消費者の認識に与える影響が大きいことに鑑み、一定の場合を除き、事実であっても不適当とするものだと説明しています。
そのうえで解説は、本項は美容師等が店頭販売において化粧品の使用方法の実演を行う場合等を禁止する趣旨ではない、と明記しています。つまり、サロンで「この商品はこう使います」と手順を見せたり説明したりすること自体は、この項目が禁じるものではありません。問題になりうるのは、効能効果に関して「美容師が勧めています」という推せんの形で広告することです。
ホームケアの説明文を作るときは、この違いを意識して書き分けます。手順を伝える文章は問題になりにくい一方、「プロが選ぶ」「美容師がすすめる」といった言い方が効能効果の推せんとして読まれるかどうかは、慎重に見る必要があります。自分のサロンが書く説明文がそもそも広告にあたるのかどうかも、媒体や文脈を含めて総合的に判断されます。迷う表現は使わないか、店販商品の販売元や保健所に確認してから使うのが無難です。
SNSで商品を紹介する場合は、投稿の作り方にも注意が要ります。AIでInstagram投稿を作る手順の記事では、施術写真を載せる前の同意と確認を扱っています。ホームケアの内容を投稿にする場合は、その記事の確認と、この記事の表現の確認を両方通してください。
仕上げに美容師が確認する箇所
仕上げの確認は「材料にない内容がないか」「効能の範囲に収まっているか」「個人情報が混じっていないか」「お客様に不安を与える書き方でないか」の4つの視点で行います。
AIの下書きを確認する順番を決めておくと、見落としが減ります。次の4つの視点で、1文ずつ見ていきます。
- 材料との照合:下書きの各文が、サロンの手順メモかメーカーの表示のどちらかに載っているかを確かめます。載っていない文は、削るか、根拠を探して確認できたものだけ残します。
- 効能の確認:効果や変化を思わせる言葉が混じっていないかを探します。「治る」「変わる」「蘇る」のような変化の言葉、「間違いなく」のような言い切り、「いちばん」のような最大級の言葉が見つかったら、前の見出しの表に沿って置き換えます。
- 個人情報の確認:氏名や連絡先、お客様個人の肌や髪の状態が文中に残っていないかを確かめます。AIには渡していない情報でも、出力後に自分で書き足すときに混ざりやすい部分です。
- 不安を与えない書き方か:基準は、不快、迷惑、不安又は恐怖を与えるおそれのある表現や方法を用いた広告を行ってはならないとも定めています。「放っておくと傷む」のように不安をあおる言い方は避け、落ち着いて手順を伝える書き方にします。
使用上の注意の部分は、とくに丁寧に見ます。メーカーの表示にある注意をそのまま写し、肌や頭皮に異常を感じたときの対応も書いておきます。異常があったときは、AIや説明文の判断で様子を見続けるのではなく、使用を中止して医師や施術者に相談するよう案内するのが基本です。説明文の最後に、サロンの連絡先と、不安があれば相談できる旨を一文添えておくと、お客様が迷いません。
仮の例|シャンプー・ドライヤー・カラー後の説明文を仕上げる
仮の例として、材料の手順メモから、AIの下書きを経て、美容師が仕上げた説明文までの流れを示します。以下の文面は、手順を見せるために作った架空のものです。
ここからは、実在のお客様やサロンを使わない仮の例で見ていきます。まず、サロンの手順メモ(材料)です。
シャンプーの前に、ブラシで髪をほぐす。ぬるめのお湯で髪と頭皮をしっかり濡らす。シャンプーは手のひらで泡立ててから、指の腹で頭皮を洗う。すすぎは時間をかけて行う。タオルで水分をやさしく拭き取り、ドライヤーは根元から乾かす。
これをAIに渡して出てきた下書きに、次のような一文が混じっていたとします。
この方法を続けると、髪が見違えるようにまとまり、ダメージも防げます。
この文は、材料に載っていない結果の約束です。「見違えるように」は変化を思わせ、「ダメージも防げます」は範囲を超えるおそれがあります。材料との照合の段階で見つけて、削ります。さらに、手順だけを残して、美容師が次のように仕上げます。
【シャンプーのしかた】1. シャンプーの前に、ブラシで髪をほぐします。2. ぬるめのお湯で、髪と頭皮をしっかり濡らします。3. シャンプーは手のひらで泡立ててから、指の腹で頭皮を洗います。4. すすぎは、時間をかけて丁寧に行います。5. タオルで水分をやさしく拭き取り、ドライヤーは根元から乾かします。
お使いの商品の量や使い方は、容器に書かれた表示に沿ってください。頭皮や肌に違和感があるときは使用をやめて、医師にご相談ください。ご不明な点は、いつでもサロンへお問い合わせください。
仕上がった文面は、手順と使用上の注意、問い合わせ先だけで構成されています。結果の約束はなく、AIが足した一文もありません。次に、カラー後の過ごし方の例です。材料のメモから、AIの下書き、美容師の仕上げまでを表にします。
| 段階 | 文面(仮の例) | 美容師の判断 |
|---|---|---|
| 材料のメモ | カラーをした日は、シャンプーの前にお湯でよくすすぐ。ドライヤーは根元から。タオルの色移りに気をつける。 | サロンの手順として決まっている内容 |
| AIの下書き | 色持ちが良くなる魔法のケアです。色落ちは防げます。 | 効果の約束と言い切りなので削る |
| 仕上げた文面 | カラーをした日は、シャンプーの前にお湯でよくすすぎます。ドライヤーは根元から乾かします。タオルへの色移りにご注意ください。気になることがあれば、お気軽にご相談ください。 | 手順と注意に絞り、相談先を添える |
3つ目の例として、商品の使い方も同じ型で作れます。メーカーの表示を写した使い方を材料にして、AIには「お客様向けの言葉に言い換えて」とだけ頼みます。効能を書きたいときは、前の見出しで紹介した別表の文言から、商品の表示にある範囲のものを選んで一文だけ添えます。
説明文を運用に載せる|保管・更新・スタッフ間の共有
完成した説明文は、サロンの共有ファイルに「材料・最終版・確認した日」を一緒に保管し、メーカーの表示が変わったときに見直せる状態にしておきます。
一度作った説明文は、使い回せる資産になります。ただし、放っておくと古くなります。商品がリニューアルされると、使い方や使用上の注意の表示が変わることがあるためです。更新に備えて、説明文を保管するときは、次の3点をひと組にしておきます。
- 最終版の文面(お客様に渡したもの)
- 材料にしたサロンの手順メモと、メーカーの表示の写し(確認した日付つき)
- 確認したスタッフの名前と、確認の観点(材料との照合、効能、個人情報、不安を与えない書き方)
こうしておくと、新しいスタッフが入ったときも、同じ基準で確認できます。表示が変わったと気づいたときも、材料の写しと見比べれば、直す箇所がすぐ分かります。AIに作らせた文章かどうかは、保管の面ではあまり関係がありません。大切なのは、どの材料から、誰が確認して、いつの版なのかが分かることです。
スタッフ間で共有するときは、AIに渡す指示文の型も一緒に置いておきます。型が同じなら、誰が頼んでも似た水準の下書きが得られます。サロンにAIの扱い方の取り決めがまだないなら、先にAI活用の始め方の記事で、使う前に決めておくルールを確かめておくと、説明文づくりの前提がそろいます。
お客様向けの発信を広げたい場合は、説明文を土台にして投稿の素材を作ることもできます。そのときも、確認は同じ4つの視点です。形が変わっても、材料と効能の確認を省かないことが、サロン全体の信頼につながります。
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AIとSNSに関する記事は、カテゴリページ美容師のAI・SNS活用にまとまっています。
よくある質問(FAQ)
- Q1. AIが作った説明文を、そのままお客様に渡してもよいですか。
- そのまま渡さず、美容師が材料と突き合わせてから使ってください。個人情報保護委員会の注意喚起も、生成AIの応答結果には不正確な内容が含まれることがあると述べています。材料にない文、効果を思わせる言葉、個人情報の混入の3点を見てから渡すのが基本です。
- Q2. 店販商品の成分表をAIに貼って、成分の働きを説明させてもよいですか。
- 成分の写しを貼ること自体は、個人情報ではないので問題になりにくい一方、成分の働きをAIに説明させる使い方はおすすめしません。説明文に載せる商品情報は、メーカーの表示にあるものに限り、それを写して使います。化粧品は、別表に記載する効能効果以外の薬理作用による効能効果の表現はできないため、成分から効果を語る書き方には特に注意が要ります。
- Q3. 「しっとり」「サラサラ」のような手触りの言葉は使えますか。
- 厚生労働省の解説は、別表以外に、メーキャップ効果や「清涼感を与える」「爽快にする」等の使用感を、事実に反しない限り表示できるとしています。ただし、解説に例として挙がっているのは限られた言葉で、「しっとり」などがどちらにあたるかは同じ資料には書かれていません。商品の表示にある言葉に沿って使い、判断に迷う場合は販売元に確認してください。
- Q4. LINEやInstagramで配る場合も、同じ確認が要りますか。
- 適正広告基準は、新聞や雑誌のほか、ウェブサイトやソーシャル・ネットワーキング・サービス等のすべての媒体における広告を対象としています。サロンの発信が広告にあたるかは文脈を含めて総合的に判断されますが、配る場所が変わっても、効能の確認は同じ視点で行うのが安全です。
- Q5. お客様の名前入りの個別メッセージを、AIで作ってもよいですか。
- 宛名や個別の状態は、AIに入力せず、出力後に美容師が手で書き足してください。個人情報保護委員会は、本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力した場合、法の規定に違反する可能性があると示しています。入力が必要でない情報は、最初から渡さないのがもっとも単純な方法です。
- Q6. 口頭で説明するときも、この確認は必要ですか。
- 適正広告基準の対象は広告ですが、口頭の説明が広告にあたるかどうかは、状況によって変わります。実演を禁止する趣旨ではないと解説が述べているとおり、手順の説明はそのまま続けて構いません。効果を言い切る、他の商品を下げる、といった話し方を避ける点は、文章と同じです。
- Q7. 無料のAIと有料のAIで、渡してよい情報は変わりますか。
- 渡してよい情報の線引きは、どちらでも同じです。違うのは、入力した内容が機械学習に使われるかどうかなど、サービスごとの規約です。個人情報保護委員会は、事業者の利用規約やプライバシーポリシーを確認して判断するよう求めています。契約前に、データの扱いの項目を読んでください。
まとめ
ホームケアの説明文は、AIに下書きを任せられる仕事です。ただし、任せるのは言葉の整理までで、お客様の個人情報を入れないこと、効果を言い切らないこと、最後の確認を美容師が行うことは、サロンの側で守ります。
手順は、場面を決める、材料をそろえる、AIに頼む、効能の表現を確認する、美容師が仕上げる、の5つの段階です。AIに渡すのは、サロンの手順メモ、メーカーの表示を写した商品情報、文面のルールに限ります。効能の確認では、厚生労働省の通知の別表と医薬品等適正広告基準の考え方を使い、結果の約束を手順の説明に置き換えます。
まず1つの場面を選び、手順のメモを作るところから始めてみてください。出来上がった説明文は、材料と確認の記録と一緒に保管しておくと、次の見直しが楽になります。AIとSNSを仕事にどう生かすかを、ほかの切り口からも確かめたい方は、下のリンクから公式LINEで案内を確認できます。
